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分子生物学:結核菌のトランスクリプトームは不完全な転写産物が優位を占めている
Nature 627, 8003 doi: 10.1038/s41586-024-07105-9
結核菌(Mycobacterium tuberculosis:Mtb)は、感染症である結核(TB)を引き起こす細菌性病原体で、世界中で多額の医療費や経済コストの原因となっている。結核菌はその生活環中で多様な環境に遭遇するが、そうした変化には主にその転写出力の再プログラム化によって対応している。しかし、結核菌の転写機構や、そうした機構が調節される仕組みはほとんど分かっていない。今回我々は、細菌細胞中で個々のRNA分子の両末端を同時に決定する塩基配列解読法を用いて、結核菌トランスクリプトームの高分解能プロファイリングを行った。予想に反して、ほとんどの結核菌転写産物は不完全であり、その5′末端は転写開始部位と合致していて、3′末端は開始部位の200~500ヌクレオチド下流に位置している。このような短いRNAは、早過ぎる段階での転写終止の産物ではなく、その多くが停止したRNAポリメラーゼ(RNAP)に結合していることが分かった。さらに、結核菌RNAPが転写初期に停止する傾向が高いのは、σ因子の結合に依存していることが明らかになった。また、翻訳中のリボソームが転写伸長を促進することが分かり、結核菌遺伝子の発現制御に転写と翻訳の共役が役割を持つ可能性が示された。まとめると我々の知見は、結核菌トランスクリプトームが、RNAPが停止した結果である不完全な転写産物を顕著な特徴とすることを示している。結核菌では、この停止段階が環境変化への適応を可能にする重要な転写チェックポイントを構成していて、これは結核治療に生かせる可能性があると、我々は考える。

