がん:7-デヒドロコレステロールはフェロトーシス感受性に影響を与える
Nature 626, 7998 doi: 10.1038/s41586-023-06983-9
フェロトーシスは調節された細胞死の一形態であり、リン脂質の鉄に依存する過酸化によって進行し、がんや変性疾患、器官の虚血再灌流傷害(IRI)などのさまざまな疾患に関わっていると考えられている。本研究で我々は、ゲノム規模のCRISPR–Cas9スクリーニングを用いて、終盤のコレステロール生合成に関わる酵素群が7-デヒドロコレステロール(7-DHC)レベルへの影響を介して、フェロトーシスの調節に重要だが対抗的な役割を持つことを明らかにする。7-DHCはコレステロール生合成終盤の中間代謝物で、ステロールC5デサチュラーゼ(SC5D)により合成され、7-DHCレダクターゼ(DHCR7)により代謝されてコレステロール合成に使われる。この経路の構成要素であるMSMO1、CYP51A1、EBPおよびSC5Dなどはフェロトーシスの抑制因子として機能している可能性があるが、DHCR7はフェロトーシス促進性遺伝子として機能していることが分かった。機構的には、7-DHCは共役ジエンを用いてフェロトーシスの監視を指令しており、自身のリン脂質自動酸化に対抗する機能を使ってリン脂質の自動酸化から細胞膜とミトコンドリア膜を保護している。重要なことに、BPを薬理学的操作の標的とすることにより内因性7-DHCの生合成を遮断するとフェロトーシスが誘導されて腫瘍増殖が抑制されるが、DHCR7を阻害して7-DHCレベルを上昇させるとがん転移が効果的に促進され、腎臓ではIRIの進行が弱まって、この軸がin vivoで重要な機能を担っていることが裏付けられた。まとめると我々のデータは、7-DHCが本来的に抗フェロトーシス性代謝物という役割を持っていることを明らかにしたもので、7-DHCレベルの薬理学的操作はがんやIRIに対する有望な治療戦略となると考えられる。

