生態学:捕食者の大量死事象は栄養分断によって食物網を再構築する
Nature 626, 7998 doi: 10.1038/s41586-023-06931-7
捕食者は生態系の構築において重要な役割を担っている。しかし、捕食者の喪失が全球的に加速しており、捕食者の大量死事象(MME)は今や人新世を象徴するものとなっている。MMEが直後に生態系に対してどのような影響を及ぼすかは、この事象がまれで予測不能であることからあまり理解されていない。過去の捕食者排除研究は、MMEの生態系への影響を理解する上では不十分であった可能性がある。というのも、自然界では、死んだ捕食者はin situで分解されて資源のパルスを生み出し、これが、一時的に生産力を高めることによってその後の生態系の動態を変化させ得るためである。今回我々は、3つの栄養段階からなる淡水湖食物網で実験的にMMEを誘発し、捕食者の喪失のみや資源パルスのみの場合とは異なる、理論から予測可能な生態学的動態を明らかにした。MMEは、捕食者によるトップダウン制御の弱化と、捕食者の分解を通したボトムアップ効果の強化の結果として、多様な消費者群集と生産者群集の成長につながった。捕食者の排除のみの場合とは対照的に、MME後の一次生産の強化は消費者群集の応答を抑制した。その結果、MMEは撹乱されていない系のものに極めて近い生物量動態を生じた。これは、MMEが自然界では隠れた撹乱となっている可能性を示している。こうした生物量動態は、捕食者が一次生産者に与える間接的な有益効果が失われた後に、植食の増強のさなかで一次生産を刺激する直接的なボトムアップ効果として表面化する、「栄養分断(trophic decoupling)」につながる。以上の結果は、MMEの生態学的特徴を明らかにするとともに、全球的な変化の強まりに伴って生じる新たな生態学的動態の予測の実現可能性を実証している。

