Review
免疫学:炎症性疾患の基盤としてのミトコンドリア内部共生の破綻
Nature 626, 7998 doi: 10.1038/s41586-023-06866-z
ミトコンドリアは内部共生が起源であることから細菌の形質を保持しているが、隔離されているため、宿主細胞はこの細胞小器官を異物として認識しない。しかし、ミトコンドリア因子の細胞質ゾルへの調節された放出は、細胞死や自然免疫、炎症を引き起こすことがある。20億年にわたる内部共生関係のこの選択的な破綻によって、ミトコンドリアは細胞内シグナル伝達のハブとして機能できる。ミトコンドリアのシグナルには、タンパク質、核酸、リン脂質、代謝物、活性酸素種があり、これらはさまざまな様式でミトコンドリアから放出され、また、細胞質ゾルや核での解読様式もさまざまである。これらのミトコンドリアシグナルは、おそらく炎症の恒常性維持の役割に関与しているため、これらの過程の調節異常は、自己免疫疾患や炎症性疾患につながる可能性がある。このような疾患の発生率が増加している理由の1つとして、肥満、食生活の変化、その他の環境要因といった最近の現象に応答した、ミトコンドリアの機能やシグナル伝達の変化が考えられる。そのため、ミトコンドリアに受け継がれてきた混合形質に着目することは、将来的な手掛かり、研究の道筋、そして治療機会の予測につながる。従って、ミトコンドリアを細胞の「内なる敵」と見なすことができる一方で、進化はこの緊張関係を興味深い方法で使用してきたのであり、内部共生で最近起きている障害が炎症性疾患の発症に重要であることを示す証拠が増えている。

