パンデミック条約は、対策に役立つ技術を、誰でも手頃な価格で利用できるようにするための得がたい機会であり、研究資金配分機関も医療への平等なアクセスに向けて力を尽くすべきだ。

Research funders must join the fight for equal access to medicines p.7

doi: 10.1038/d41586-024-00237-y

科学の政治化と政治の科学への介入が懸念されているが、科学者は世間からの信用を生かし、政府と協力してこれらの懸念を払拭しなければならない。

How can scientists make the most of the public’s trust in them? p.8

doi: 10.1038/d41586-024-00238-x

運用開始から40年、先進的な核融合実験炉である欧州トーラス共同研究施設（JET）の廃炉作業が開始。

Pioneering nuclear-fusion reactor shuts down: what scientists will learn p.13

doi: 10.1038/d41586-024-00135-3

AlphaFoldによって数十万もの幻覚薬候補が特定されたが、研究者からは、このAIが創薬にどれほど役立つか疑問の声も。

AlphaFold found thousands of possible psychedelics. Will its predictions help drug discovery? p.14

doi: 10.1038/d41586-024-00130-8

米国のダナ・ファーバーがん研究所の多数のがん関連論文の画像不正を指摘した、元研究者でブロガーのSholto Davidに、発見の過程などについて話を訊いた。

Dana-Farber retractions: meet the blogger who spotted problems in dozens of cancer papers p.16

doi: 10.1038/d41586-024-00202-9

資金配分機関、学術出版社、研究機関などが協力して、論文工場（ペーパーミル）問題への取り組みを開始。

Science’s fake-paper problem: high-profile effort will tackle paper mills p.17

doi: 10.1038/d41586-024-00159-9

日本の小型月着陸実証機SLIMが、狙った場所へのピンポイント着陸に成功。

Japan’s successful Moon landing was the most precise ever p.18

doi: 10.1038/d41586-024-00151-3

血中タンパク質の解析から、COVID-19後遺症（long COVID）に特有のシグネチャーがあることが明らかに。

Long-COVID signatures identified in huge analysis of blood proteins p.19

doi: 10.1038/d41586-024-00158-w

慢性ストレスによって、腸を病原体から守っている細胞が減少することを示す報告が。

How does chronic stress harm the gut? New clues emerge p.20

doi: 10.1038/d41586-024-00188-4

がんによるニューロンの乗っ取り

How cancer hijacks the nervous system to grow and spread p.22

がんは既存の神経機構を乗っ取って増殖・転移しているが、そうしたがんと神経系のクロストークを阻害して治療に役立てる研究が進められている。

doi: 10.1038/d41586-024-00240-3

生態学：生態系へのラッコの影響が沿岸の侵食を抑制する

Ecosystem effects of sea otters limit coastal erosion p.35

保全によって、食物連鎖の上位にある特定の捕食者が回復しているが、これが生態系全体に及ぼす影響は議論の的になっている。今回、綿密な野外調査によって、ラッコが沿岸侵食の緩和に役立つことを示す強力な証拠が得られた。

doi: 10.1038/d41586-024-00073-0

量子情報：移動できる原子による論理キュービットの強化

Mobile atoms enable efficient computation with logical qubits p.36

今回、移動できる中性原子の小さな集団を極めて精密に操作して、「論理」キュービットが形成された。こうしたキュービットは、個々の原子より確実に量子計算を行うことができる。

doi: 10.1038/d41586-024-00075-y

工学：情報化時代の織物を作るフレキシブルファイバー

Flexible fibres take fabrics into the information age p.38

今回、繊維に半導体デバイスを埋め込む手法によって、長さが数百メートルの欠陥のない糸が作られた。こうした糸で織られた衣類によって、将来のウエアラブルエレクトロニクスが垣間見える。

doi: 10.1038/d41586-024-00076-x

微生物学：細菌の被食者が捕食者との形勢を逆転する

Bacterial prey turns the tables on predator p.39

今回、細菌の捕食者と被食者の関係が逆転するまれな例によって、こうした種の相互作用がこれまで理解されていたより複雑であることが示唆された。

doi: 10.1038/d41586-024-00228-z

構造生物学：遺伝子のコピー・アンド・ペースト機構のスナップショット

Snapshots of genetic copy-and-paste machinery in action p.40

DNA因子であるLINE-1は、自己複製して、そのコピーをゲノムの新たな領域に挿入する。これは、染色体進化の重要なプロセスである。今回、ヒトでこのプロセスを実行する機構の構造が報告された。

doi: 10.1038/d41586-024-00112-w

公衆衛生：接触追跡アプリが予測する伝播リスク

Contact-tracing app predicts risk of SARS-CoV-2 transmission p.42

今回、スマートフォンアプリによって算出された新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の感染リスクは、その後の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2（SARS-CoV-2）検査で陽性になる確率と比例していることが分かった。この結果は、デジタル接触追跡が将来のパンデミックと闘う有用なツールであることを示している。

doi: 10.1038/d41586-023-04063-6

持続可能性：持続可能な未来のための循環型炭素・プラスチック経済の設計

Designing a circular carbon and plastics economy for a sustainable future p.45

doi: 10.1038/s41586-023-06939-z

量子情報：再構成可能な原子アレイに基づく論理量子プロセッサー

Logical quantum processor based on reconfigurable atom arrays p.58

doi: 10.1038/s41586-023-06927-3

光物理学：レーザー駆動結晶におけるバンド間ベリー位相の観測

Observation of interband Berry phase in laser-driven crystals p.66

doi: 10.1038/s41586-023-06828-5

工学：機械的設計による高品質半導体ファイバー

High-quality semiconductor fibres via mechanical design p.72

doi: 10.1038/s41586-023-06946-0

ナノスケール材料：ダイヤモンドにおける非整合双晶境界の構造転移と移動

Structural transition and migration of incoherent twin boundary in diamond p.79

doi: 10.1038/s41586-023-06908-6

エネルギー科学：プロトン交換膜システムにおける持続的なCO₂変換

Durable CO₂ conversion in the proton-exchange membrane system p.86

doi: 10.1038/s41586-023-06917-5

化学：電荷再配置によるアルケンの立体発散的1,3-二官能基化

Stereodivergent 1,3-difunctionalization of alkenes by charge relocation p.92

doi: 10.1038/s41586-023-06938-0

電気化学：硫黄の16電子還元反応における反応ネットワークの確立

Establishing reaction networks in the 16-electron sulfur reduction reaction p.98

doi: 10.1038/s41586-023-06918-4

太陽電池：出力重量比の高いフレキシブルなシリコン太陽電池

Flexible silicon solar cells with high power-to-weight ratios p.105

doi: 10.1038/s41586-023-06948-y

生態学：頂点捕食者の回復は沿岸生態系の地形の劣化を緩和する

Top-predator recovery abates geomorphic decline of a coastal ecosystem p.111

doi: 10.1038/s41586-023-06959-9

進化遺伝学：自然雑種の複合体Iにおける致死的なミトコンドリアと核間の不和合性

A lethal mitonuclear incompatibility in complex I of natural hybrids p.119

doi: 10.1038/s41586-023-06895-8

神経科学：ラトロフィリン3の選択的スプライシングはシナプス形成を制御する

Alternative splicing of latrophilin-3 controls synapse formation p.128

doi: 10.1038/s41586-023-06913-9

神経科学：痛がる他者への援助行動の皮質による調節

Cortical regulation of helping behaviour towards others in pain p.136

doi: 10.1038/s41586-023-06973-x

公衆衛生：デジタル測定による700万回の接触記録から得られたSARS-CoV-2伝播リスク

Digital measurement of SARS-CoV-2 transmission risk from 7 million contacts p.145

doi: 10.1038/s41586-023-06952-2

遺伝学：親和性を高めるエンハンサーバリアントが発生異常を引き起こす

Affinity-optimizing enhancer variants disrupt development p.151

doi: 10.1038/s41586-023-06922-8

免疫学：ギラン・バレー症候群では自己反応性T細胞が末梢神経を標的とする

Autoreactive T cells target peripheral nerves in Guillain–Barré syndrome p.160

doi: 10.1038/s41586-023-06916-6

細胞生物学：VAPB分子の動きから明らかになった小胞体–ミトコンドリア接触部位のサブドメイン

Motion of VAPB molecules reveals ER–mitochondria contact site subdomains p.169

doi: 10.1038/s41586-023-06956-y

微生物学：説明可能な深層学習による抗生物質の構造クラスの発見

Discovery of a structural class of antibiotics with explainable deep learning p.177

doi: 10.1038/s41586-023-06887-8

構造生物学：レトロトランスポジションでのヒトLINE-1による鋳型と標的部位の認識

Template and target-site recognition by human LINE-1 in retrotransposition p.186

doi: 10.1038/s41586-023-06933-5

構造生物学：ヒトLINE-1 ORF2タンパク質の構造、機能と適応

Structures, functions and adaptations of the human LINE-1 ORF2 protein p.194

doi: 10.1038/s41586-023-06947-z

バイオインフォマティクス：ショウジョウバエ胚の選択された組織を標的とする合成エンハンサーの設計

Targeted design of synthetic enhancers for selected tissues in the Drosophila embryo p.207

doi: 10.1038/s41586-023-06905-9

バイオインフォマティクス：細胞タイプに合わせた合成エンハンサーの設計

Cell-type-directed design of synthetic enhancers p.212

doi: 10.1038/s41586-023-06936-2