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化学生物学:ステロール引き抜きの反応速度論的性質の調節によって得られた腎毒性のないポリエン系抗真菌薬

Nature 623, 7989 doi: 10.1038/s41586-023-06710-4

腎臓に害を及ぼさないポリエン系抗真菌薬を開発するための何十年にもわたるこれまでの試みは、古典的な膜透過モデルのために誤った方向に進んでしまった。しかし最近になって、臨床的に重要だが腎毒性が高い小型の天然分子アンホテリシンBが見つかり、これは主に膜外にスポンジ状の凝集体を作って脂質二重層からエルゴステロールを引き抜くことによって真菌を殺すことが分かった。今回我々は、真菌エルゴステロールの迅速で選択的な引き抜きという方法が、腎臓に害のない強力なポリエン系抗真菌薬につながることを明らかにする。コレステロールの引き抜きは、ヒト腎細胞に対するアンホテリシンBの毒性を促進することが分かっている。アンホテリシンBの作るスポンジ状凝集体の高分解能構造を、ステロールを含まない状態とステロールに結合した状態で詳しく調べることにより、構造的にコレステロールとは結合せず、従って腎臓に害を及ぼさない有望な構造的誘導体が見つかった。しかし、この誘導体はエルゴステロールを引き抜く速度が遅いため、活性も弱かった。そこで、構造にもう1つ変更を加えてエルゴステロールの引き抜きを選択的に加速することで、新たなポリエン化合物AM-2-19が得られた。AM-2-19は、マウスおよびヒト腎細胞初代培養で腎毒性を示さず、数百種類もの病原性真菌株に対して強い抗真菌作用を持ち、in vitroでの連続継代後も耐性が生じることはなく、侵襲性真菌症の動物モデルで高い有効性を示した。このように、小型分子間の相互作用の動態を合理的に調整することが、いまだに毎年数百万人もの死者が出る真菌感染症のより良い治療法につながる可能性が出てきた。これはまた、特定の脂質を標的として超分子構造を介して作用することが最近明らかになったものなど、耐性を回避する他の抗菌剤につながる可能性もある。

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