Article
生物物理学:単一分子の動態から明らかになった、リポ多糖を輸送する一時的な橋
Nature 623, 7988 doi: 10.1038/s41586-023-06709-x
グラム陰性細菌は2つの膜で覆われている。外膜の特殊な性質はその非対称性で、外膜の外葉にはリポ多糖(LPS)が、内葉にはリン脂質が含まれている。外膜のLPSの適切な組み立ては細胞の生存に必要であり、また、これが多数のクラスの抗生物質に対するグラム陰性細菌固有の抵抗性をもたらしている。LPSの生合成は内膜で完了するため、LPSは内膜から引き抜かれ、2つの膜を分ける水性のペリプラズムを通って運ばれ、外膜を通過して細胞表面で組み立てられなくてはならない。LPSの輸送と組み立てには、保存された7種類の必須なLPS輸送の構成要素(LptA~G)が必要である。この系では、タンパク質が連なった橋を作り、LPSを細胞表面に届けるための経路となるという見方がなされているが、このモデルは生細胞ではまだ検証されていない。今回我々は、単一分子追跡を行い、Lptタンパク質の動態がこの橋モデルと一致することを示す。内膜のLptタンパク質の半数は橋の状態で存在し、橋が存続するのは5~10秒間であることから、その構造は極めて動的に変化することが分かった。LPSはLptの橋形成を促進することから、LPSの産生がその輸送と直接共役する機構が示唆される。さらに、橋の崩壊の速度論から、LPSが存在するか(長寿命)、しないか(短寿命)によって安定性が異なる、2つの異なるタイプの橋が存在する可能性が示唆された。まとめると我々のデータは、LPSは外膜の組み立てを促進するLptの動的橋構造の基質であると同時に、その構造の構成要素でもあるというモデルを裏付けている。

