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生態学:海洋熱波は底生魚類の変化の主要な駆動要因ではない
Nature 621, 7978 doi: 10.1038/s41586-023-06449-y
海洋熱波はこの数十年、複数の生態学的悪影響と関連付けられてきた。海洋熱波が、魚類において群集の再構成や生物量の激減を定期的に引き起すのであれば、その影響は、生態系、漁業、人間社会にとって壊滅的なものとなる可能性がある。しかし、海洋熱波が魚類の生物量や群集組成にどの程度の悪影響を及ぼすのか、さらには、そうした影響が自然の変動やサンプリングによる変動と区別可能なのかについては、まだ明らかにされていない。我々は、亜熱帯から北極域にわたる、北米およびヨーロッパの大陸棚生態系に関する長期的な科学調査で得られた8万2322回分の採集試料を分析することで、1993~2019年に発生した248例の海底熱波が海生魚類に与えた影響を調べた。本論文で我々は、海洋熱波が魚類の生物量に及ぼす影響は最小限である場合が多く、自然変動およびサンプリング変動との区別がつかなかったことを示す。さらに、調べた生態系において、海洋熱波と、熱帯化(温暖海域の種の増加)や脱北方化(寒冷海域の種の減少)の間には一貫した関連は見られなかった。海洋熱波に続いて生物量が急減する例も散見されたが、それは例外であって一般的ではなかった。海洋生態系の変動が極めて大きいという背景に照らすと、海洋熱波は、世界で最も大規模で極めて生産性の高い漁業の多くを支える魚類群集において、生物量の変化や群集構成種の入れ替わりを駆動してはこなかったことになる。

