遺伝学:ヒト転写エフェクタードメインの大規模マッピングと変異誘発
Nature 616, 7956 doi: 10.1038/s41586-023-05906-y
ヒトの遺伝子発現は、2000種類を超える転写因子とクロマチン調節因子によって調節されている。これらのタンパク質中のエフェクタードメインは、転写を活性化したり抑制したりできる。しかし、これらの調節因子の多くでは、含んでいるエフェクタードメインのタイプや、それらのドメインのタンパク質内での位置、活性化や抑制の強度、機能に必要なアミノ酸配列が不明である。今回我々は、ヒト細胞のクロマチン調節因子と転写因子の大半(2047のタンパク質)をタイリングした、10万以上のタンパク質断片について、そのエフェクター活性を系統的に測定した。レポーター遺伝子に誘導されたときの影響を調べることにより、374の活性化ドメインと715の抑制ドメインが注釈付けされた。このうち約80%は新しいドメインで、これまで注釈付けされていなかったものである。全てのエフェクタードメインに対する合理的な変異誘発と欠失スキャンから、活性化ドメインの活性には、芳香族残基および/またはロイシン残基の間に、酸性、プロリン、セリン、グルタミン残基の全て/またはいずれかが散在していることが必要だと分かった。さらに、ほとんどの抑制ドメインの配列は、SUMO(small ubiquitin-like modifier)化部位や、コリプレッサーを誘導する短い相互作用モチーフを含んでいたり、他の抑制性タンパク質を誘導する結合ドメイン構造を取っていたりする。また、活性化と抑制のどちらにも働き得る二機能ドメインが見つかり、それらの一部は、細胞集団を動的に高発現亜集団と低発現亜集団に二極化させていた。今回のエフェクタードメインの系統的な注釈付けと特性解析は、ヒトの転写因子とクロマチン調節因子の機能解明や、遺伝子発現を制御するためのコンパクトなツールの作製、エフェクタードメイン機能の予測モデルの改良に対して、豊富な研究資源を提供する。

