Article

神経科学:睡眠中の脳半球間競合

Nature 616, 7956 doi: 10.1038/s41586-023-05827-w

睡眠の機能と機構についての理解はいまだ不完全であり、その複雑さがますます明らかになってきている。同様に、睡眠中の左右の脳半球間での協調に関する研究結果は、既知の回路や機構と関連付けるのが難しいことが多い。今回我々は、睡眠中のフトアゴヒゲトカゲ(Pogona vitticeps)の前障から活動記録を行い、フトアゴヒゲトカゲの急速眼球運動(REMP)および徐波睡眠の開始と終了は半球間で協調しているものの、これら2つの睡眠状態は左右の前障間の協調においては顕著に異なることを示す。徐波睡眠では、左右の前障は互いに独立して鋭波リップルを生み出し、半球間での協調は見られなかった。対照的に、REMP睡眠では、左右の前障で生じる電位は、振幅と時間の点で正確に協調していた。ただし、これらの信号は同期しておらず、一方が他方に約20 ms先行していて、先行する半球は通常、1回のREMPエピソードごとに1回、あるいは連続するエピソードの間に1回、左右で切り替わっていた。先行する前障はより強い活動を示し、これは半球間での競合を示唆している。しかし、この競合は左右の前障または終脳半球間で直接起こるのではなく、中脳で、峡複合体中のGABA(γアミノ酪酸)作動性の神経核の一体性(integrity)に依存して起きていた。峡複合体は、全ての脊椎動物に存在し、鳥類ではボトムアップ型の注意や注視の制御の基盤であることが知られている。今回の結果から、フトアゴヒゲトカゲの脳の左右半球間には勝者総取り式の競合が存在し、これは中脳で生起し、前障の活動とREMP睡眠中の協調に正確に伝えられることが明らかになった。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度