環境社会科学:中国における環境の持続可能性と農家の収入を高め得る作物の切り替え
Nature 616, 7956 doi: 10.1038/s41586-023-05799-x
食料システムの持続可能性の実現は、多元的な課題である。中国では、1990年以降の作物生産量の倍増によって、持続可能性の他の側面が損なわれることになった。中国は、生産効率の向上や環境への影響軽減のためにさまざまな介入を進めているが、作物の切り替えによってより持続可能な作付体系を実現できるかどうかや、トレードオフを回避するのに協調的行動が必要かどうかは、ほとんど分かっていない。今回我々は、作物別の収量、収穫面積、環境フットプリント、農家の収入に関する高分解能データを組み合わせて、作物生産の持続可能性の現況を初めて定量化した。我々は、さまざまなレベルの省庁間の調整と中央政府による調整の下で、作物を再配分して農業の一連の持続可能な開発目標を満たす、空間的な最適化を行った。それぞれの省庁が単一の持続可能性の成果の改善を別々に追求する縦割り的手法では、作物の切り替えによって個別の利益は大きくなるが、他の側面とのトレードオフや地域間のトレードオフが生じた。中央政府による、トレードオフを抑えた調整では、ブルーウォーター(灌漑用水)が−4.5%から−18.5%へ、グリーンウォーター(天水)が−4.4%から−9.5%へ、温室効果ガス(GHG)が−1.7%から−7.7%へ、化学肥料が−5.2%から−10.9%へ、殺虫剤が−4.3%から−10.8%へと減少し、環境への影響を低減する著しい相乗便益が得られた一方、農家の収入も+2.9%から+7.5%へと増加したことが見いだされた。中央政府の調整による作物切り替えのこうした成果は、中国の2030年における農業の持続可能な開発目標に向けて大きく寄与でき(さまざまな側面にわたって23~40%)、全球の資源を節約できる可能性がある。この統合的な手法は、実現可能な標的を定めた農業への介入に情報を与え、さまざまな側面にわたって持続可能な相乗便益を実現できる。

