発生生物学:胎仔肝の造血幹細胞と造血前駆細胞の起源は独立している
Nature 609, 7928 doi: 10.1038/s41586-022-05203-0
成体の骨髄では造血幹細胞(HSC)の恒常性を維持するために、自己複製と分化は厳密に制御されている。胎仔の発生中、体の成長のために造血系を維持するには、HSCの増幅(自己複製)と分化した造血系細胞の産生(分化)の両方が必要である。しかし、これら2つの相反するように見える役割が、短い胚発生期間内にどのように達成されるかは明らかにされていない。今回我々は、マウスにおいてin vivoでの遺伝的追跡を用い、プレ造血幹細胞(pre-HSC)を含み転写因子HLF(hepatic leukaemia factor)を発現する動脈内造血クラスターからの、HSCと造血前駆細胞の形成を解析した。動態解析により、HLF+プレ造血幹・前駆細胞(pre-HSPC)集団から、HSCおよび特定の造血前駆細胞(これまでHSCの子孫細胞とされていた)が同時に形成されること、また、これに続いて、胎仔肝においてHSCに依存しない形で造血系細胞集団の階層様構造が迅速に形成されることが観察された。転写因子EVI1はpre-HSPC集団内での発現が不均一で、EVI1hi細胞は主に胚内の動脈に局在しており、優先的にHSCを作り出していた。EVI1の発現を遺伝的に操作することで、in vivoにおいてpre-HSPCからのHSCおよび造血前駆細胞の産生を変化させることができた。さらに、運命追跡を用いることで、妊娠後期に短期生存HSCを生み出すためには、胎仔HSCはほとんど使われないことも実証された。これらのデータから、胎仔HSCは出生前には造血前駆細胞および機能的な血液細胞の産生には最小限しか関与していないことが示唆された。従って、発生過程での幹細胞に非依存性の経路は、組織と幹細胞プールの迅速かつ同時の拡大のための合理的な戦略である。

