Article

生化学:呼吸複合体Iの普遍的な共役機構

Nature 609, 7928 doi: 10.1038/s41586-022-05199-7

複合体Iは呼吸鎖の最初の酵素であり、ミトコンドリアや細菌でエネルギー産生を担っている。複合体Iは、NADHからキノンへの2つの電子の伝達と、膜を横切る4つのプロトンの移動を共役させているが、この共役機構についてはいまだに議論が続いている。今回我々は、大腸菌(Escherichia coli)複合体I(EcCI)について、触媒代謝回転など、さまざまな酸化還元状態におけるクライオ電子顕微鏡構造を示す。EcCIは主に、キノンを取り込む空洞が細胞質ゾルに露出した開状態で存在しているため、水分子が到達でき、それによりキノンの移動が可能になる。EcCIは、哺乳類のパラログとは異なり、閉状態に変換できるのは代謝回転中のみであることから、閉状態と開状態が真正の代謝回転中間体であることが分かった。開状態から閉状態への移行により、空洞にキノンがしっかりと抱え込まれ、これが基質プロトンの供給源である膜アーム部の中心軸に接続される。これと一致して、閉状態の割合はpHの上昇とともに増加した。我々は、プロトン移動と静電相互作用の一連の「ドミノ効果」からなる、詳細だが単純でロバストな機構を提案する。すなわち、順方向の波(「ドミノスタッキング」)によってこのポンプがプライミングされ、逆方向の波(「ドミノ倒し」)によって汲み上げた全てのプロトンが遠位サブユニットNuoLから放出されるという機構である。この機構は、プロトンがNuoLサブユニットからのみ排出される理由を説明しており、我々の変異誘発データによって裏付けられている。我々は、これが複合体Iおよび関連酵素の普遍的な共役機構であると主張する。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度