構造生物学:集光状態と光防御状態にあるフィコビリソームの構造
Nature 609, 7928 doi: 10.1038/s41586-022-05156-4
フィコビリソーム(PBS)という構造は、シアノバクテリアや紅藻類では精巧なアンテナとなっている。これらの大型のタンパク質複合体は、入射する太陽光を捕捉し、そのエネルギーを膜に埋め込まれたビリンと呼ばれる色素分子群のネットワークを介して光合成反応中心へと伝達する。しかし、集光は光損傷のリスクともバランスを取らなくてはならない。光防御の方法として知られているものの1つには、オレンジカロテノイドタンパク質(OCP)が関わっており、光が強い時にはOCPはPBSに結合して、非光化学的消光によりPBSを光から防御する。今回我々は、シアノバクテリアのモデルとされているSynechocystis sp. PCC 6803由来の6.2 MDaのPBSのOCPが結合している場合と結合していない場合の4つの構造を、クライオ電子顕微鏡法を用いて解いた。これらの構造には、これまで報告されていなかったリンカータンパク質が含まれていて、これはPBSの膜に面した側に結合している。消光が行われなかったPBSでは、これらの構造からアンテナの3つの異なるコンホメーション状態が明らかになり、そのうちの2つはこれまで知られていなかった。このようなコンホメーション状態は、ロッドと呼ばれる棒状構造のうちの2つの位置交換によって生じたもので、集光のこれまで知られていなかった調節様式を構成している可能性がある。PBSの3つのコンホメーションのうちでOCPと結合できるのは1つだけであり、これは、非光化学的消光に対する感受性が全てのPBSで同じではないことを示唆している。OCP–PBS複合体では、2つの二量体を形成している4つのOCP(34 kDa)の結合によって、消光が達成される。この複合体からOCPの活性型の構造が明らかになり、この構造では調節に関わるカルボキシ末端ドメインの約60 Åの移動が起こることが分かった。また、得られた構造を分光学的性質と組み合わせることで、消光状態と集光状態の両方でのPBS中のエネルギー移動経路が明らかになった。まとめると我々の結果から、シアノバクテリアでの集光の制御の生物物理学的基盤についての詳細な知見が得られる。このデータはまた、天然および人工の集光系におけるPBS調節のバイオエンジニアリングに関わってくるだろう。

