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神経科学:海馬アストロサイトは報酬の位置を符号化している
Nature 609, 7928 doi: 10.1038/s41586-022-05146-6
アストロサイトのカルシウム動態は、感覚情報の符号化と関係があるとされており、アストロサイト内カルシウムの調節は行動に影響を及ぼすことが示されている。しかし、覚醒マウスの海馬のアストロサイトで、リアルタイムのカルシウム活性の長期的変化は調べられていない。今回我々は、二光子顕微鏡法を用いて、マウスが水報酬を求めて既知または新規のバーチャル環境中を移動する際の海馬CA1領域アストロサイトを、長期にわたって画像化した。その結果、既知環境ではアストロサイトのカルシウム活性は、報酬位置に近づくにつれて持続的な漸増を示したのに対し、新規環境ではこれは認められなかった。既知環境内でも、報酬の位置を変えると漸増の程度は下がった。追加訓練後、マウスが新しい状況や新しい報酬位置に馴れてくるにつれ、漸増反応は再確立された。線形復号装置を用いると、既知環境にいるマウスであれば、アストロサイトのカルシウム活性だけでマウスの現在位置を予測できた。新規環境内では同様の推測ができないことから、アストロサイト活性の空間調節は経験依存的なものと示唆される。今回の結果は、アストロサイトが空間的状況内での予想される報酬の位置を符号化できることを示しており、これによりアストロサイトの既知の計算能力やその認知機能上の役割が広がった。

