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食物学:ヨーロッパにおける酪農、疾患、ラクターゼ持続性の進化

Nature 608, 7922 doi: 10.1038/s41586-022-05010-7

ヨーロッパ人集団、ならびに多くのアフリカ人集団、中東人集団、南アジア人集団において、ラクターゼ持続性(LP)は、過去1万年の間に進化した単一遺伝子形質の中で最も強力に選択されたものである。LPの選択と先史時代の乳の消費には関連があるに違いないが、その時空間的な構造や具体的な相互作用に関してはかなりの不確実性が残されている。今回我々は、550以上の考古学的遺跡で見つかった土器・陶器に付着していた約7000の脂質残渣を用いて、ヨーロッパ各地における過去9000年間の乳利用の詳細な分布を明らかにした。ヨーロッパの乳使用は、新石器時代から広範に及んでいたが、その程度には空間的および時間的な変動があった。注目すべきことに、先史時代の乳利用のレベルとともに変動するLPの選択は、LPの対立遺伝子頻度の説明としては、新石器時代以降の一様な選択よりも優れてはいない。現代のヨーロッパ人50万人からなる英国バイオバンクのコホートでは、LP遺伝子型は乳消費と弱く関連しているにすぎず、適応度や健康指標の向上との一貫した関連は見られなかった。これは、LPの頻度の迅速な上昇に関して、LPの有益な影響の別の理由を考慮すべきであることを示唆している。我々は、ラクターゼ非持続性の人々も乳が利用可能になったときに消費を行ったが、飢餓の条件や病原体への曝露が増加した条件では、乳利用が不利になり、それによって先史時代のヨーロッパにおけるLP選択が促進されたと提唱する。モデル尤度の比較により、LP選択の駆動要因の代理指標である、集団の変動、居住地密度、野生動物の利用が、乳利用の程度以上にLP選択を適切に説明することが示された。これらの知見は、先史時代の乳利用およびLPの進化に関して新たな見方をもたらしている。

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