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細胞生物学:SARS-CoV-2の複製オルガネラのバイオジェネシスにおけるNSP6の役割

Nature 606, 7915 doi: 10.1038/s41586-022-04835-6

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、他のコロナウイルス類と同様に膜結合性の複製オルガネラを形成することでRNA複製を可能にする。SARS-CoV-2の複製オルガネラは、薄い膜状のコネクターによって小胞体につなぎ止められた二重膜小胞(DMV)構成されているが、関連するウイルスタンパク質や宿主因子は明らかにされていない。今回我々は、SARS-CoV-2の複製オルガネラを作り出す、ウイルスの非構造タンパク質(NSP)群を特定した。NSP3とNSP4はDMVを作り出すのに対し、NSP6はオリゴマー化と両親媒性のヘリックスを介して小胞体の膜をジッパーのように閉じてコネクターを構築する。NSP6(ΔSGF)変異株は、SARS-CoV-2のアルファ、ベータ、ガンマ、イータ、イオタ、ラムダの変異株で独立して生じたもので、より強い小胞体ジッパー形成活性を持った機能獲得型変異株として働く。我々は、NSP6の3つの主要な役割を明らかにした。1つ目は、複製オルガネラと小胞体間のコミュニケーションのフィルターとしての作用で、脂質の流動は許可するが、小胞体内腔のタンパク質のDMVへの接触を制限している。2つ目は、DMVクラスターの配置と組織化であり、3つ目は、脂肪滴(LD)をつなぎ止める複合体であるDFCP1–RAB18を介したLDとの接触の仲介である。このように、NSP6はDMVクラスターの組織化因子として機能し、LD由来の脂質でDMVクラスターが新たな構造を取るための選択的な手段を提供し得る。特に、適切に形成されたNSP6コネクターとLDの両方が、SARS-CoV-2の複製に必要とされることは重要である。我々の結果は、SARS-CoV-2や他のコロナウイルス類のNSP6の生物学的活性についての理解を深め、広域抗ウイルス薬の探索を促進させる可能性がある。

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