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代謝:運動によって誘発され、摂餌と肥満を抑制する代謝物
Nature 606, 7915 doi: 10.1038/s41586-022-04828-5
運動は、肥満症や2型糖尿病、またその他の心代謝性疾患に対して防御作用をもたらす。しかし、身体活動の代謝への効果を仲介する分子レベルや細胞レベルの機序はいまだによく分かっていない。今回我々は、運動がN-ラクトイルフェニルアラニン(Lac-Phe)の産生を促進することを明らかにする。Lac-Pheは、血中に存在するシグナル伝達性の代謝物で、摂餌と肥満を抑制する。乳酸とフェニルアラニンからのLac-Pheの生合成は、さまざまな器官に局在するCNDP2+細胞(マクロファージ、単球などの免疫細胞や上皮細胞が含まれる)で起こる。食餌性肥満マウスでは、薬理学的な方法によってLac-Pheを増加させると、食物摂取量が減少したが、運動やエネルギー消費には影響がなかった。Lac-Pheを長期投与すると、脂肪蓄積量と体重が減少して、グルコース恒常性が改善された。逆に、マウスでLac-Phe生合成を遺伝的手法で遮断すると、運動訓練後の食物摂取量が増加し、肥満になった。さらに、活動に誘発される血中Lac-Pheの大幅な上昇はヒトと競走馬でも観察され、この代謝物が複数の哺乳類にわたってさまざまな様式の身体活動に関連している分子エフェクターであることが確認された。これらのデータは、食物摂取を制御し全身的なエネルギー収支に影響を及ぼす、運動誘発性の保存された代謝物を明らかにしている。

