心血管生物学:心血管系制御と心肺系制御の分子的に定義された回路
Nature 606, 7915 doi: 10.1038/s41586-022-04760-8
交感神経系と副交感神経系は内臓の活動を調節しているが、それらを構成するニューロンや回路の分子的多様性や機能的多様性については、ほとんど分かっていない。今回我々は、ニューロンの逆行性追跡、単一細胞RNA塩基配列解読、光遺伝学実験、生理学実験を用いて、マウス心臓の副交感神経制御回路を解析した。その結果、脳幹の疑核(Amb)における心臓神経支配ニューロンは、分子的・解剖学的・機能的に異なる2つのサブタイプで構成されていることが明らかになった。1つ目のサブタイプは、古典的な心臓副交感神経回路を規定しており、我々はこれをACV(ambiguus cardiovascular)ニューロンと命名した(Amb当たり約35個のニューロン)。ACVニューロンは、心臓副交感神経節ニューロンのサブセットを選択的に支配し、圧受容器反射を介して、血圧の上昇に応じて心拍数と房室結節伝導を遅らせた。2つ目のサブタイプはACP(ambiguus cardiopulmonary)ニューロンで(Amb当たり約15個のニューロン)、心臓神経節ニューロンを支配しており、これらの神経節ニューロンはACVニューロンに支配されたニューロンと混在していて、機能的には分離できない。ACPニューロンはまた、肺副交感神経節ニューロンの大半または全てを神経支配しており、クローン標識を行ったところ、個々のACPニューロンはこれら2つの器官を共に支配することが明らかになった。ACPニューロンは潜水反射、すなわち、水浸後に同時に起こる徐脈と気管支収縮を仲介する。従って、心臓の副交感神経制御は並行した2つの回路で編成されていて、一方(ACV回路)は選択的に心臓機能を制御し、もう一方(ACP回路)は心臓と肺の機能を連携させている。今回得られた心臓制御に関する新たな理解は、心肺疾患の治療や、他の器官の制御回路や調節回路の解明に意味を持つ。

