植物科学:植物の免疫や水分損失において気孔を再び開く植物サイトカインシグナル伝達
Nature 605, 7909 doi: 10.1038/s41586-022-04684-3
気孔は、ガス交換と水蒸気を介して、地球の炭素循環や水循環に大きな影響を与えている。気孔の閉鎖は、脱水に対応して水分損失を防ぐとともに、病原体の侵入を制限する。しかし、気孔の閉鎖が長引くと光合成と蒸散が低下し、水分を含んだアポプラストが生じて、これは病原体の定着を促進する。気候が変化する中で、植物がどのように気孔の再開口を動的に調節しているのかは、明らかになっていない。今回我々は、分泌ペプチドSMALL PHYTOCYTOKINES REGULATING DEFENSE AND WATER LOSS(SCREW)とそのコグネイト受容体キナーゼPLANT SCREW UNRESPONSIVE RECEPTOR(NUT)が、植物ホルモンであるアブシジン酸(ABA)や微生物関連分子パターン(MAMP)が誘発する気孔の閉鎖を、逆向きに調節することを示す。NUTに感知されたSCREWは免疫調節性植物サイトカインとして機能し、補助受容体SOMATIC EMBRYOGENESIS RECEPTOR-LIKE KINASE(SERK)を動員して免疫シグナルを伝達する。SCREWはNUT依存的なABA INSENSITIVE 1(ABI1)とABI2のリン酸化を引き起こし、これがABAやMAMPが誘発する気孔閉鎖に関与する重要なキナーゼであるOPEN STOMATA 1(OST1)に対するABIホスファターゼの活性上昇と、S型陰イオンチャネルの活性低下につながる。脱水や病原体感染によって誘発されると、SCREW–NUTシグナル伝達はアポプラストの水分量低下を促進し、微生物の多い水環境を破壊して、病原体の定着を制限する。このSCREW–NUT系は陸上植物に広く分布することから、生物的ストレスや非生物的ストレスが原因で起こる無制御な気孔閉鎖を防いで植物の適応度を最適化する上で、この系が重要な役割を担っていることが示唆される。

