Article

発生生物学:Tbx2は内有毛細胞と外有毛細胞の分化のマスター調節因子である

Nature 605, 7909 doi: 10.1038/s41586-022-04668-3

蝸牛は、2種類の機械感覚細胞を用いて音を検出する。1列の内有毛細胞(IHC)がニューロンにシナプスを形成して感覚情報を脳に伝達するのに対し、3列の外有毛細胞(OHC)は聴覚入力を選択的に増幅する。これまでに、OHCの特異的な分化に関与する転写因子が2つ見つかっているが、我々の知る限り、IHCの分化に関係する因子は1つも特定されていない。OHCの分化に関連する転写因子の1つであるINSM1は、極めて重要な胚期の間に働いてOHCの運命を確立させ、OHCがIHCへと分化転換するのを防いでいる。INSM1がないと、胚のOHCではIHC特異的遺伝子のコアセットが誤って発現されることから、我々はこれらの遺伝子がIHCの分化に関与していると予測した。今回我々は、マウスで、これらの遺伝子の1つであるTbx2が、IHCとOHCの分化のマスター調節因子であることを見いだした。胚のIHCでTbx2を除去すると、これらの細胞はOHCとして発生し、Insm1などの初期のOHCマーカーを発現して、最終的にはIHCの位置で完全に成熟したOHCになった。また、Tbx2Insm1に対して遺伝的に上位にあり、これら2つの遺伝子を欠く蝸牛ではOHCしか作られなかった。これは、TBX2が、正常なIHC分化だけでなく、INSM1欠損OHCのIHCへの異常な分化転換に必須であることを示唆している。その大部分が分化した出生後のIHCでTbx2を除去すると、これらの細胞は直接OHCに分化転換し、IHCの特徴が、胚のOHCの特徴ではなく、成熟したOHCの特徴に置き換えられた。さらに、OHCでTbx2を異所的に発現させると、これらの細胞はIHCに分化転換した。従って、Tbx2は、IHCとOHCを区別し、発生を通じてこれらの違いを維持するのに必要かつ十分である。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度