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幹細胞:ヒト多能性幹細胞を8細胞期胚様の段階に巻き戻す
Nature 605, 7909 doi: 10.1038/s41586-022-04625-0
受精後、静止状態の接合子では一気にゲノム活性化が起こり、短期間の全能性状態が始まる。ヒト細胞において全能性の過程を理解すれば、幅広い応用が可能になるだろう。しかし、マウスとは対照的に、in vitroで培養されたヒト細胞における接合子ゲノム活性化あるいは8細胞(8C)期の時期の実証はいまだ報告されておらず、胚の研究は倫理的および実践的な考慮事項により制限されている。今回我々は、ヒト多能性幹細胞から8C様細胞(8CLC)を作製するための、導入遺伝子を用いない、迅速かつ制御可能な方法について報告する。単一細胞解析から、この変換に関連する主要な分子事象と遺伝子ネットワークが特定された。また、機能喪失実験から、卵母細胞におけるDNAメチル化のマスター調節因子であるDPPA3と、マウスには存在しないETCHbox(eutherian totipotent cell homeobox)ファミリーの転写因子であるTPRX1の基本的な役割が特定された。DPPA3は8CLCへの変換過程を通じてDNA脱メチル化を誘導する一方、TPRX1は8CLC遺伝子ネットワークの重要な実行因子である。さらに、8CLCはin vitroあるいはin vivoでブラストイドや複雑な奇形腫の形で胚および胚体外の細胞系譜を作り出せることが実証された。我々の手法は、ヒトの初期胚発生の分子過程を明らかにするための情報資源となる。

