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幹細胞:ヒト体細胞から多能性幹細胞への化学的再プログラム化

Nature 605, 7909 doi: 10.1038/s41586-022-04593-5

細胞の再プログラム化により、細胞のアイデンティティーを操作して、目的の細胞タイプを作製できる。卵母細胞の細胞質や転写因子など、細胞固有の構成要素を用いることで、体細胞を多能性幹細胞へと再プログラム化させることができる。対照的に、小分子への曝露による化学的刺激は、単純かつ高度に制御可能なやり方で細胞の運命を操作できる代替手法である。しかし、ヒトの体細胞は、エピゲノムが安定していて可塑性が低いため、化学的刺激に抵抗性である。そのため、化学的再プログラム化によってヒト多能性幹細胞を誘導することは困難である。今回我々は、可塑性のある中間状態を生み出すことにより、ヒト体細胞を、胚性幹細胞の主要な特徴を示すヒト化学的誘導多能性幹細胞へと化学的に再プログラム化できることを実証する。化学的再プログラム化の全軌跡の解析により、初期段階で可塑性のある中間状態が誘導され、その際に化学的に誘導された脱分化が起こり、この過程がメキシコサンショウウオ(アホロートル)の肢再生で起こる脱分化過程と類似していることが明らかになった。さらに、JNK経路が化学的再プログラム化の重要な障壁であることが突き止められ、この経路の阻害は、細胞可塑性の誘導と、炎症性経路を抑制することによる再生に類似したプログラムの誘導に不可欠であった。我々の化学的手法は、生物医学においてヒト多能性幹細胞の作製と応用のためのプラットフォームになる。この研究は、明確に定義された化合物を用いて、ヒトの細胞運命を変化させる再生治療戦略を開発するための基礎となる。

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