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コロナウイルス:多様なSARS-CoV-2変異株に対する3回ワクチン接種者の記憶B細胞のレパートリー

Nature 603, 7903 doi: 10.1038/s41586-022-04466-x

オミクロン(B.1.1.529)株は、これまでで最も多く変異を起こした重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の変異株であり、中和抗体に対して強い抵抗性を持つため、抗体治療やワクチンの効果に関する懸念を引き起こしている。今回我々は、不活化SARS-CoV-2ワクチンの接種を2回あるいは3回受けた人の血清が、真正のオミクロン株を中和できるかどうか調べた。中和抗体のセロコンバージョン率はワクチンの2回接種者と3回接種者で、それぞれ3.3%(60人中2人)と95%(60人中57人)であった。3回ワクチン接種者では、オミクロン株に対する幾何平均中和抗体価は従来株の値(254)の16.5分の1だった。我々は、3回接種者の記憶B細胞から323種類のヒトモノクローナル抗体を単離した。その半数は受容体結合ドメインを認識し、また一部(163種類中24種類)は、オミクロン株を含むSARS-CoV-2の懸念される変異株(VOC)全てを強力に中和することが分かった。代表的な広域中和モノクローナル抗体の治療的投与は、SARS-CoV-2ベータ(B.1.351)株やオミクロン株のマウス感染に高い防御性を示した。5つのVOC全てに活性のある3つのクラスの抗体と複合体を形成したオミクロンスパイクタンパク質の原子構造から、結合決定基と中和決定基が明らかになった。また、重要な抗体回避部位G446Sが見つかり、これは結合境界面での局所的コンホメーションを変化させて、受容体結合ドメインの右肩に結合する抗体クラスに対して、より強い抵抗性をもたらすことが分かった。我々の結果は、3回免疫レジメンを用いる合理性を説明するものであり、広域で非常に強力なこれらの抗体によって明らかになった基本的なエピトープは、サルベコウイルスのユニバーサルワクチンの合理的な標的であることを示唆している。

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