神経科学:栄養素特異的な消化管ホルモンが求愛か摂餌かを決定する
Nature 602, 7898 doi: 10.1038/s41586-022-04408-7
動物は、状況に依存する様式で行動の優先順位を設定し、ある行動から別の行動へと適切な瞬間に切り替えなければならない。今回我々は、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)で、摂餌から求愛への行動移行を調整している分子機構およびニューロン機構を探った。その結果、飢餓状態の雄では求愛よりも摂餌が優先されており、その順位はタンパク質に富む食物の摂取によって数分以内に逆転することが明らかになった。分子レベルでは、消化管由来の栄養素特異的な神経ペプチドホルモンである利尿ホルモン31(Dh31)が、摂餌から求愛への切り替えを推進することが示された。我々はさらに、カルシウム画像化によってその根底にある動態を調べ、食物由来のアミノ酸がDh31+腸内分泌細胞を急速に活性化して、循環血中のDh31レベルを上昇させることを見いだした。加えて、無傷のハエの3光子機能的画像化から、Dh31+腸内分泌細胞の光遺伝学的な活性化によって、Dh31受容体(Dh31R)を発現する脳の一部のニューロンが速やかに興奮することが示された。消化管由来のDh31は循環系を介して数分以内に脳のニューロンを興奮させており、これは摂餌と求愛の間の行動切り替えの速さと合致する。回路レベルでは、脳には2つの異なるDh31R+ニューロン集団が存在し、一方の集団がアラタ体抑制ホルモンのアラトスタチンCを介して摂餌を抑制するのに対し、もう一方の集団は神経ペプチドのコラゾニンを介して求愛を促進することが分かった。まとめると我々の知見から、タンパク質に富む食物の摂取が消化管ホルモンの放出を引き起こし、これが次いで並列した2つの経路を介して摂餌よりも求愛を優先させる、という機序が明らかになった。

