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発生生物学:Brahmaは心臓中胚葉分化のキャナリゼーションを保護する

Nature 602, 7895 doi: 10.1038/s41586-021-04336-y

分化は、次第に運命が制限されゆく一連の中間体を経て進行し、これはキャナリゼーションと呼ばれる。キャナリゼーションは細胞運命を安定させるために不可欠だが、ロバストなキャナリゼーションの基礎となる機構については分かっていない。今回我々は、マウスで、BAF(BRG1/BRM-associated factor)クロマチンリモデリング複合体のATPアーゼ遺伝子であるBrmが、胚性幹細胞の方向付けされた心臓発生の際に細胞のアイデンティティーを保護していることを示す。十分な分化により予定心臓中胚葉が樹立されているにもかかわらず、Brm−/−細胞は主に神経前駆細胞になり、胚葉の割り当てに従わなかった。軌跡推定からは、Brm−/−細胞が非中胚葉性のアイデンティティーを突然獲得することが分かった。機構的には、Brmの喪失は、プライミングされた心臓エンハンサーのde novoアクセシビリティーを阻害する一方、神経発生因子POU3F1の発現を上昇させ、神経抑制因子RESTの結合を阻害してBRG1複合体の構成を変化させる。Brm変異によって生じたアイデンティティーの切り替えは、中胚葉誘導中にBMP4レベルを上昇させることで克服された。数理モデル化はこれらの観察結果を裏付けており、Brmの欠失が、サドルノード分岐を変化させることで細胞運命の軌跡に影響を及ぼすことが実証された。マウス胚でBrmを欠失させると、中胚葉欠損Brg1変異体表現型が増悪し、心臓発生が著しく損なわれることから、in vivoでのBrmの役割が明らかになった。我々の結果は、Brmが、中胚葉クロマチン状態の忠実度の補償可能な保護機構であることを示しており、発生のキャナリゼーションは固定された不可逆的な経路ではなく、高度な可塑性を持つ軌跡であるとするモデルを支持している。

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