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遺伝学:シロイヌナズナの変異の偏りは自然選択を反映する

Nature 602, 7895 doi: 10.1038/s41586-021-04269-6

20世紀前半から、進化論では、変異はその結果にはよらずランダムに起こるとする考え方が主流となってきた。今回我々は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)でde novo変異の大規模な調査を行い、この前提を検証した。その結果、予想に反して、機能的に制約のあるゲノム領域では変異が起こる頻度が低くなり、変異頻度は遺伝子本体では半分に、必須遺伝子では3分の1に低下することが分かった。我々は、現在までに行われた最も大規模なシロイヌナズナ変異蓄積実験を含む、独立した複数のゲノム変異データセットを使って、遺伝子周辺における変異の偏りのゲノム規模のパターンに見られる違いの90%以上が、エピゲノムの性質と物理的性質によって説明できることを実証する。観察された遺伝子周辺の変異頻度から、シロイヌナズナ自然系統でも同様に遺伝的多型のパターンが正確に予測できた(r = 0.96)。対立遺伝子頻度の解析から、そうした変異の偏りが、自然系統で遺伝子周辺の塩基配列の進化パターンを生み出す主な原動力であることが裏付けられた。さらに、強力な純化選択にさらされている遺伝子ほど変異速度が低いことも分かった。我々は、エピゲノムに関連した変異の偏りが、シロイヌナズナでの有害変異の発生を低下させていると結論付ける。これは、進化において変異は方向性を持たない原動力であるとする、広く受け入れられているパラダイムに疑問を投げ掛けるものである。

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