Article
微生物学:メチシリン耐性の出現は抗生物質の臨床使用以前に起きていた
Nature 602, 7895 doi: 10.1038/s41586-021-04265-w
80年以上前に抗生物質が発見されたことで、ヒトや動物の健康が大幅に改善された。環境細菌の抗生物質耐性は古くから存在するが、ヒト病原体の耐性は、抗生物質の臨床使用により引き起こされた近代以降の現象と考えられている。今回我々は、ヒト病原体として悪名高いメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の特定の系統が、抗生物質使用以前の時代にナミハリネズミ(Erinaceus europaeus)で出現していたことを示す。その後、これらの系統が地域のハリネズミ集団内部や、ハリネズミから家畜やヒトを含む二次宿主の間で広がった。また、ハリネズミの皮膚糸状菌の一種Trichophyton erinaceiが2種類のβラクタム系抗生物質を産生することを実証する。これらの抗生物質は、MRSAが、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌に比べて有利になる自然選択環境を提供している。まとめるとこれらの結果は、メチシリン耐性が、抗生物質が使われるようになる前に、皮膚糸状菌が感染したハリネズミに黄色ブドウ球菌が定着するための共進化的適応として出現したことを示唆している。臨床的に重要な抗生物質耐性遺伝子の野生動物での進化と、自然生態系、農業生態系、人間生態系との結び付きは、「ワンヘルス(One Health)」の観点からの取り組みが、世界の健康、食料安全保障、発展にとって最大の脅威の1つである抗生物質耐性の理解と管理に極めて重要であることを示している。

