量子情報:シリコンにおける3キュービットドナー量子プロセッサーの高精度トモグラフィー
Nature 601, 7893 doi: 10.1038/s41586-021-04292-7
核スピンは、量子コヒーレンスが非常に優れており、フットプリントが原子スケールであるため、量子情報処理用に検討された最初の物理的プラットフォームの1つである。しかし、誤り耐性のある量子計算を維持するのに十分な忠実度で、スケーラブルなデバイス内の核キュービットをリンクさせてマルチキュービット演算を行う方法がないため、量子計算向けの核スピンの全潜在能力はまだ実現されていない。今回我々は、シリコンナノエレクトロニクスデバイスにおいて、イオン注入された1対の31Pドナー核を用いて、万能量子論理演算を実証する。共有電子スピンに幾何学的位相を与えることによって、核2キュービット制御Zゲートが得られ、これを用いて、エンタングルしたベル状態が最高94.2(2.7)%の忠実度で準備された。量子演算は、ゲートセットトモグラフィー(GST)を用いて精密に評価され、これによって、最高99.95(2)%の1キュービット平均ゲート忠実度、99.37(11)%の2キュービット平均ゲート忠実度、98.95(4)%の2キュービット準備/測定忠実度が得られた。これら3つの指標は、シリコン中の核スピンが、誤り耐性量子プロセッサーに要求される性能に近づいていることを示している。次に我々は、92.5(1.0)%の忠実度でグリーンバーガー–ホーン–ツァイリンガー3キュービット状態を生成することによって、2つの核と共有電子の間のエンタングルメントを実証する。半導体中の電子スピンキュービットは、他の電子とさらに結合させることや、さまざまな位置にわたって物理的に往復させることが可能なので、今回の結果によって、ドナー核スピンと電子スピンを用いたスケーラブルな量子情報処理への実現可能なルートが確立される。

