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免疫学:流行中のSARS-CoV-2変異株がmRNAワクチン誘導性免疫に及ぼす影響

Nature 600, 7889 doi: 10.1038/s41586-021-04085-y

主要な中和抗体結合部位に変異を持つ重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)変異株の出現は、感染やワクチン接種によって誘導される体液性免疫に影響する可能性がある。今回我々は、SARS-CoV-2に対するmRNAワクチンの接種者について、SARS-CoV-2の感染歴のある人(回復者)と感染歴のない人(未感染者)で、抗SARS-CoV-2抗体とT細胞応答の誘導を解析した。ワクチン接種後、感染歴のある人は未感染者よりも高い抗体価を維持していたが、未感染者は2回目のワクチン接種後に野生株に対して同等レベルの中和応答を達成した。スパイクあるいはヌクレオカプシドペプチドによるin vitro刺激で測定されたT細胞活性化マーカーは、ワクチン接種後に徐々に上昇することが分かった。局所的に流行中の異なるSARS-CoV-2変異株の16の分離株を用いて血漿中和抗体価を包括的に解析すると、スパイク遺伝子の特定の変異に関連する中和能力の低下の範囲が明らかになった。具体的には、中和能力の低下が最も大きいのはE484KおよびN501Y/Tを持つ系統(例えばB.1.351やP.1)で、次にL452Rを持つ系統(例えばB.1.617.2)であった。両グループは全ての変異株に対して中和能力を保持していたが、感染歴のあるワクチン接種者の血漿は、2回ワクチン接種した未感染者の血漿よりも全体的に優れた中和能力を示した。これらのことから、新たな変異株が抗体の中和活性に及ぼす影響を軽減させるための今後の戦略として、ワクチンの追加接種が挙げられる。

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