Article

免疫学:SARS-CoV-2ポリクローナル中和抗体の回避に対する高い遺伝的障壁

Nature 600, 7889 doi: 10.1038/s41586-021-04005-0

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染からの回復期にある人やSARS-CoV-2ワクチン接種者における、ポリクローナル抗体が標的とする中和エピトープの数や多様性は、中和範囲やウイルスの抗体回避に対する遺伝的障壁の重要な決定因子である。今回我々は、HIV-1シュードタイプや水疱性口内炎ウイルス/SARS-CoV-2キメラでの血漿選択実験によって、受容体結合ドメイン内外にある多数の中和エピトープが、ヒトポリクローナル抗体によってさまざまに標的化されることを示す。抗体の標的は、自然のSARS-CoV-2集団で見られる多様性に富んだスパイク配列と一致した。我々は、血漿で選択されたスパイク置換を組み合わせることで、流行している懸念される変異株と同程度にポリクローナル抗体による中和に抵抗性を示す、人工的な「多変異型(polymutant)」スパイクタンパク質シュードタイプを作製した。懸念される変異株に関連した置換と、抗体によって選択されたスパイク置換を、単一の多変異スパイクタンパク質に集めることで、SARS-CoV-2スパイクタンパク質中に自然に起きた変異が20個あれば、回復期患者やmRNAワクチン接種者で作られるポリクローナル中和抗体に対してほぼ完全に抵抗性のシュードタイプを生じるのに十分であることを示す。しかし、感染歴がありその後mRNAワクチンを接種した人の血漿は、この抵抗性の高いSARS-CoV-2多変異スパイクタンパク質や多様なサルベコウイルスのスパイクタンパク質を持つシュードタイプを中和した。従って、SARS-CoV-2に対して最適な形で誘導されたヒトポリクローナル抗体は、今後のSARS-CoV-2の多様な変化に対応できるはずであり、また将来的に起こり得るサルベコウイルスのパンデミックに対する防御となると考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度