気候科学:世界のエネルギー消費に対する炭素の社会的費用の見積もり
Nature 598, 7880 doi: 10.1038/s41586-021-03883-8
二酸化炭素(CO2)の排出に起因する世界の経済的損害の見積もりは、気候政策に情報を提供することができる。炭素の社会的費用(SCC)は、現在のCO2排出量の増加が気候の変化を通して将来の経済的成果にどのような影響を及ぼすかを記述することで、こうした損害を定量化する。これまでの見積もりから、温暖化によって生じるエネルギー支出の大幅な増加がSCCの大半を占める可能性が示唆されているが、それらは、空間的に粗くデータと密接に関連していないモデルに依存したものである。今回我々は、現時点で1トンのCO2が放出されると、将来の総エネルギー支出が減り、割引率に応じて見積もりの大半が−3〜−1ドルになると予測されることを示す。今回の結果は、世界的なデータ、計量経済学、気候科学を統合して世界各地の地域別損害を見積もるアーキテクチャーに基づいている。特に我々は、熱帯の新興経済国の電力消費量が温暖化によって劇的に増加し、それによって重要なインフラの計画が必要となると予測する。しかし、世界的には、寒冷地の国々における暖房の減少によってこの増加が相殺される。2099年の世界の年間電力消費量は、全球平均表面温度(GMST)が1°C上昇するごとに約4.5エクサジュール(現在の世界の消費量の7%)増加するが、他の燃料の直接消費量はGMSTが1°C上昇するごとに約11.3エクサジュール(現在の世界の消費量の7%)減少すると見積もられた。正味の省エネルギーという今回の知見は、これまでの研究結果とは相反している。これは、世界的なデータが、21世紀の大半において多くの人々があまりに貧し過ぎ、温暖化に対応してエネルギー消費を大幅に増やすことができないままであることを示しているからである。重要なのは、より貧困な人々をより重視すれば、損害の見積もりが異なると思われることである。

