Article

遺伝学:エンハンサーの遊離と標的への再誘導が疾患感受性遺伝子を活性化する

Nature 595, 7869 doi: 10.1038/s41586-021-03577-1

エンハンサーとその標的プロモーターとの機能的結合は、遺伝子の正確な転写を保証する働きをする。従って、エンハンサーによるプロモーター選択の基盤の解明は、健康や病気に重要な関わりがある。今回我々は、好ましいプロモーターの機能が失われると、その結合相手であるエンハンサーは遊離して、代わりとなる近隣のプロモーター(群)の所へループを作って活性化することを報告する。我々はこの標的切り替え過程を、「エンハンサーの遊離と標的への再誘導」と名付けた。遺伝子の欠失、モチーフの異常や変異、またdCas9を介したCTCF繋留から、エンハンサーによるプロモーターの選択が、CTCFのプロモーターへの結合によってコヒーシンに依存する方式で決定されることが明らかになった。これは、接触ドメイン内での「エンハンサースキャニング」モデルと一致する。プロモーターに結合したCTCFは、クロマチンのドメイン境界付近にあるCTCFよりも親和性が低く、好ましいモチーフの方向性や対応するエンハンサーに結合したCTCFとの連携がない場合が多いことから、境界付近のCTCFとは異なる性質を持つと考えられる。がんの変異、GTExプロジェクトからのデータ、ゲノム規模関連研究からのリスク座位の解析を、絞り込んだCRISPR干渉スクリーニングと組み合わせたところ、エンハンサーの遊離と標的への再誘導が、疾患感受性遺伝子を活性化する、これまで見落とされてきた機序であることが明らかになった。こういった疾患感受性遺伝子の例としては、パーキンソン病のリスク座位(NUCKS1RAB7L1)や、がんに関連する3つの座位(CLPTM1LTERTZCCHC7PAX5PVT1MYC)などが挙げられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度