Article
物性物理学:モアレグラフェンにおけるパウリ極限の破れとリエントラント超伝導
Nature 595, 7868 doi: 10.1038/s41586-021-03685-y
モアレ量子物質は、相関相やトポロジカル相をかつてないほどの制御力で探究できる材料プラットフォームとして浮上している。中でも、2層または3層のグラフェンで構築された魔法角系は、非従来型の特徴を持つロバストな超伝導相を示すことが分かっている。しかし、非従来型対形成の直接的な証拠は、まだ実験的には実証されていない。今回我々は、魔法角ねじれ3層グラフェンが、面内磁場が10 Tを超えるまで超伝導を示すことを明らかにする。これは、従来型のスピン一重項超伝導体に関するパウリ極限が大きく(2~3倍)破れていることを意味し、強いスピン–軌道結合を持つと予測されていない系では予想外の観測結果である。パウリ極限の破れは超伝導相全体にわたって観測され、これは、大きな超伝導振幅対形成を伴う擬ギャップ相の可能性とは関連していないことを示している。注目すべきことに、大磁場においてリエントラント超伝導が観測され、このリエントラント超伝導は、より狭い範囲のキャリア密度と変位場にわたって存在していた。これらの知見は、魔法角ねじれ3層グラフェンにおける超伝導が、非スピン一重項クーパー対をもたらす機構によって駆動される可能性が高いこと、そして、外部磁場によって、秩序パラメーターが互いに異なる可能性のある相の間で転移が生じ得ることを示唆している。今回の結果は、モアレ超伝導の豊かさを実証するとともに、次世代エキゾチック量子物質の設計につながる可能性がある。

