免疫学:組織常在型マクロファージは初期のNSCLC細胞に腫瘍発生促進ニッチを提供する
Nature 595, 7868 doi: 10.1038/s41586-021-03651-8
マクロファージは、腫瘍微小環境(TME)や腫瘍免疫、免疫療法への応答を形作る上で重要な役割を担っており、そのため、がん治療において重要な標的となっている。しかし、腫瘍マクロファージ区画の分子的多様性や機能的多様性に関する理解が不完全なため、マクロファージを調節するのは非常に困難であることが分かっている。マクロファージは、2つの異なる細胞系譜から生じる。組織常在型マクロファージは、成体の造血とは独立して局所的に自己複製を行うのに対し、短寿命の単球由来マクロファージは、成体造血幹細胞から生じ、主に炎症病変部に蓄積する。これらのマクロファージ系譜がTMEやがんのプログレッションに関与する仕組みについては、まだ分かっていない。今回我々は、ヒトの非小細胞肺がん(NSCLC)病変でのマクロファージ区画の多様性を調べるために、腫瘍関連白血球の単一細胞RNA塩基配列解読を行った。その結果、ヒトとマウスの肺腫瘍に豊富に見られるマクロファージには、異なる複数の集団があることが明らかになった。我々は、系譜追跡法を用いて、これらのマクロファージ集団が異なる起源を持ち、TME内で時空間的に異なる分布をしていることを見いだした。組織常在型マクロファージは、腫瘍形成初期に腫瘍細胞の近傍に蓄積して上皮間葉転換と腫瘍細胞の浸潤性を促進する他、腫瘍細胞を適応免疫から保護する強力な制御性T細胞応答を誘導することが分かった。組織常在型マクロファージを枯渇させると、制御性T細胞の数が減少してその表現型が変化し、CD8+ T細胞の蓄積が促進されて、腫瘍の浸潤性と増殖が低下した。組織常在型マクロファージは、腫瘍増殖の間にTMEの周辺で再分布されるようになり、マウスとヒトのNSCLCの両方において、TMEでは単球由来マクロファージが支配的になった。今回の研究は、初期肺がんへの組織常在型マクロファージの関与を明らかにするとともに、組織常在型マクロファージを初期肺がん病変の予防と治療の標的として確立するものである。

