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がん:単一細胞がんゲノムの時系列モデル化から推論されたクローンの適応度

Nature 595, 7868 doi: 10.1038/s41586-021-03648-3

がんゲノムの適応度の状況、特にコピー数変化(CNA)によって決まる適応度状況の解明がこれまでなかなか進まなかったのは、多クローン性集団からの単一細胞の時系列試料抽出がなされず、時間的統計モデルがなかったためである。今回我々は、乳房上皮と原発性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者由来の異種移植片(PDX)の複数年にわたる時系列単一細胞全ゲノム塩基配列解読を行って4万2000例のゲノムを得て、TP53変異とシスプラチン化学療法によって誘発される、CNAで規定されるクローン適応度の動的変化の性質を明らかにした。新しいライト・フィッシャー集団遺伝学モデルを用いてクローンの適応度を推論したところ、TP53の変異が適応度状況を変化させて、適応度を異なるCNAに関連するより多くのクローンに再現可能に分布させることが分かった。また、TP53変異を持つTNBC PDXモデルでは、CNAに基づく遺伝型から推論した適応度係数によって、実験的に強制したクローン競争の動態を正確に予測できた。3種類の長期的に連続して継代したTNBC PDXに薬剤投与すると、薬剤投与しない条件で低適応度系統からシスプラチン耐性クローンが生じた。逆に、薬剤投与していない対照群からの高適応度クローンは消滅し、これは適応度状況の逆転を示している。さらに、薬剤投与をやめると選択圧の動態が逆転したことから、治療への耐性には適応度コストがかかっていることが示唆される。以上より、多クローン性腫瘍において、クローンの適応度がCNAと薬剤耐性の両方に結び付いていることが明確になった。

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