発生生物学:毛包幹細胞の起源の追跡
Nature 594, 7864 doi: 10.1038/s41586-021-03638-5
組織幹細胞は、器官特異的な形態形成事象を介して胚の前駆細胞集団から作り出される。組織幹細胞は器官の恒常性や再生を担う中心的存在であるが、これまでは主に、将来的に幹細胞になる細胞のみを標識するマーカーがなかったために、それらが発生過程でどのように誘導されるかは分かっていなかった。今回我々は、マーカーに依存しない長期3Dライブイメージングと単一細胞トランスクリプトミクスを組み合わせて、マウス毛包の上皮全体における発生過程の細胞系譜の動的な進行とトランスクリプトームの変化を捉えた。その結果、異なる上皮細胞系譜の前駆細胞が毛包プラコードの基底層において二次元的な同心円状に並んでいることが分かった。各同心円状リングは固有のトランスクリプトームを獲得していて、各リング領域が伸長することにより、長軸方向に並んだ三次元的な筒状の区画が形成された。将来のバルジ幹細胞は、(以前示唆されたように)基底上層細胞由来ではなく、毛包プラコード基底層の辺縁のリング由来であった。プラコード細胞の運命は、細胞分裂の方向によってではなく、細胞の位置によって決定されていた。我々はまた、上皮細胞系譜の多様化に伴って変動する13の遺伝子クラスターも特定した。これらの遺伝子クラスターの集合的な発現動態は、上皮細胞系譜が生まれる過程の遺伝子発現変動の全体像を捉えており、これは、細胞系譜データで見いだされた多様化の過程と一致する。我々は、これらの知見を昆虫の付属肢の発生についてのこれまでの研究と組み合わせ、プラコードの二次元的な同心円状の領域が望遠鏡のように伸長して、長軸方向に三次元的に並んだ筒状の区画を形成するという、外胚葉器官の発生についての一般化モデル「テレスコープモデル」を提唱する。

