Article
精密測定:1兆分の81の精度での微細構造定数の決定
Nature 588, 7836 doi: 10.1038/s41586-020-2964-7
素粒子物理学の標準模型は、(ほぼ)全ての実験結果と矛盾せず、非常に大きな成功を収めている。一方でこの標準模型は、暗黒物質、暗黒エネルギー、宇宙における物質と反物質の不均衡を説明できない。標準模型の予測と実験的観測結果の間の不一致から新たな物理の証拠が得られる可能性があるため、こうした予測を正確に見積もるには、基礎物理定数の非常に正確な値が必要である。そうした定数のうち、微細構造定数αは、光と電子やミューオンなどの荷電素粒子との間の電磁相互作用の強さを決めるため、特に重要である。今回我々は、物質波干渉法を用いて、光子を吸収するルビジウム原子(Rb)の反跳速度を測定し、微細構造定数を1兆分の81の相対精度でα−1 = 137.035999206(11)と決定した。αにおける11桁の精度から、標準模型の最も正確な予測値である電子のg因子の不確かさが大幅に低減された。今回の微細構造定数の値は、セシウム(Cs)の反跳測定から得られている利用可能な最良の結果と、5標準偏差以上異なっている。今回の結果は、励起ベリリウム8(8Be)原子核の異常崩壊を説明できる可能性があると提案されている、暗黒物質粒子候補の制約条件を修正するとともに、電子セクターでミューオンの磁気モーメント異常に観測された不一致を検証する道を開くものである。

