生物工学:細菌のシチジンデアミナーゼ毒素はCRISPRを必要としないミトコンドリア塩基編集を可能にする
Nature 583, 7817 doi: 10.1038/s41586-020-2477-4
細菌の毒素は生化学的多様性の巨大な貯蔵庫であり、生物医学に転用できることがある。このようなタンパク質には、デアミナーゼスーパーファミリーに属し細菌間毒素と推定されている一群が含まれ、そのメンバーは遺伝子編集技術に活用できることが判明している。これまでに報告されているシチジンデアミナーゼは一本鎖の核酸に作用するので、これを塩基の編集に使うには、例えばCRISPR–Cas9系による場合のように、二本鎖DNA(dsDNA)をほどく必要がある。しかし、ミトコンドリアDNA(mtDNA)内の塩基の編集は、ガイドRNAのミトコンドリア内への送達が難しいことで、これまで妨げられてきた。その結果、mtDNAの改変は現在まで、デザイナーヌクレアーゼを使ったミトコンドリアゲノムの標的破壊に限られている。今回我々は、dsDNA内部のシチジンの脱アミノ反応を触媒する細菌間毒素(DddAと命名)について報告する。DddAを半分にした二分割DddAは毒性を持たず不活性だが、隣接して結合したプログラム可能なDNA結合タンパク質によって標的DNA上で1つに合わさると活性になる。二分割DddA、TALE(transcription activator-like effector)配列タンパク質、ウラシルグリコシラーゼ阻害剤を融合すると、RNAを含まないDddA由来シトシン塩基編集装置(DdCBE)が形成され、これはヒトmtDNAのC•G→T•A変換を触媒し、標的特異性および産物純度が高い。このDdCBEを使って作ったヒト細胞の疾患関連mtDNA変異のモデルでは、呼吸速度と酸化的リン酸化が変化した。CRISPRを必要としないDdCBEは、標的ヌクレアーゼによる破壊で生じるmtDNAコピーを取り除くのとは違って、mtDNAの正確な操作が可能となるので、ミトコンドリア病の研究や将来の治療に広く影響を及ぼすだろう。

