生化学:栄養ストレスの際のリボソームインベントリーの体系的定量分析
Nature 583, 7815 doi: 10.1038/s41586-020-2446-y
哺乳類細胞は栄養ストレスに応じてプロテオームを再編成するが、それには翻訳の抑制に加えてプロテアソームとオートファジー系を用いる分解機構が使われる。リボソームはこの応答の主要な標的だが、それはリボソームが翻訳に中心的な役割を担っており、栄養ストレスの際にはリソソームによる代謝回転の対象となるからである。リボソームタンパク質(rタンパク質)は、大量に存在していて(プロテオームの約6%;細胞当たり107コピー)、アルギニンとリシンの含有量が高いので、栄養ストレスの際には塩基性アミノ酸の供給源としてオートファジーを介して選択的に使われるという仮説が出されている。しかし、急性ストレス応答の際のrタンパク質量の制御に翻訳機構と分解機構が相対的にどんな割合で寄与しているのかはほとんど解明されておらず、特定の構成要素が不足した場合のアミノ酸産生にrタンパク質がどの程度使われるかも分かっていない。今回我々は、トランスレートームとデグラドーム全体の定量的プロテオミクスを、遺伝的にコードされたRibo–KeimaおよびRibo–Haloレポーターの使用と組み合わせて、活発なオートファジーのある場合とない場合のrタンパク質の恒常性を精査した。急性栄養ストレスの条件下では、細胞はrタンパク質の翻訳を強く抑制するが、rタンパク質の分解は主として非オートファジー経路によって起こる。これと同時に、rタンパク質量の減少は既存のリボソームの希釈の低下と細胞体積の減少によって相殺されるので、単一細胞内のリボソーム密度は維持される。塩基性もしくは疎水性のアミノ酸の離脱は、リボファジーの特異的誘導を起こすことなく、翻訳抑制を引き起こす。この結果は、リボファジーは急性栄養ストレスの際の塩基性アミノ酸の選択的な産生には使われないことを示している。これらの知見は、栄養ストレス条件下で、生合成機構と分解機構がrタンパク質の存在量とプロテオームの再編成にどのように寄与するかの定量的な枠組みを示すものだ。

