Article
加齢:神経興奮とRESTによる寿命の調節
Nature 574, 7778 doi: 10.1038/s41586-019-1647-8
ヒトで寿命を延長する機構についてはよく分かっていない。今回我々は、ヒトにおける寿命延長が、神経興奮やシナプス機能と関連する遺伝子群の発現低下を特徴とする、大脳皮質の独特なトランスクリプトームシグネチャーと関連していることを示す。線虫の一種Caenorhabditis elegansでは、老化に伴って神経興奮の上昇が見られ、全体的な興奮抑制、あるいはグルタミン作動性またはコリン作動性ニューロンにおける興奮を抑制すると、寿命が延長した。さらに、寿命は神経回路の興奮と抑制のバランスにより動的に調節される。長寿のヒトでは、転写因子RESTの発現が上昇して、神経興奮に関連する遺伝子を抑制していた。特に、REST欠損マウスでは、加齢中に大脳皮質活動の上昇とニューロンの興奮性が見られたことは重要である。同様に、C. elegansのRESTオルソログ遺伝子であるspr-3とspr-4の機能喪失変異は、神経興奮を上昇させ、長寿命であるdaf-2変異体の寿命を短縮した。野生型の線虫では、spr-4を過剰発現させると興奮が抑制され、寿命が延長した。REST、SPR-3、SPR-4および興奮低下は、長寿命に関連する転写因子であるFOXO1(哺乳類)とDAF-16(線虫)を活性化させた。以上の知見から、神経回路の活動により仲介され、RESTにより調節される保存された老化機構が明らかになった。

