Letter

感染症:サヘルではマラリア媒介蚊が風に運ばれて長距離移動する

Nature 574, 7778 doi: 10.1038/s41586-019-1622-4

マラリアを制圧するための過去20年間にわたる努力により、全球的には症例数が半減したが、アフリカのかなりの地域ではマラリア負荷は高いままであり、南アフリカのような、負荷が極度に低下したまま維持されている地域ですら、マラリア排除は達成されていない。1年のうちの3〜8か月間は地表水が存在しない地域でマラリアが持続するという異常事態の解明を試みた複数の研究から、ハマダラカ属(Anopheles)の一部の種が長距離移動を行うことが示唆されている。今回我々は、地表から40〜290 mの高さの大気中で蚊の採取を行うことでこの仮説を確認し、アフリカのマラリア媒介蚊の風に運ばれる移動とその結果としての蚊が伝染させる病原体の移動について、我々が知る限りで最初の証拠を示す。マリのサヘルでの617回の夜間大気採取の際に捕集された235匹のハマダラカの中には、主要なマラリア媒介蚊であるAnopheles coluzziiなど、10種が含まれていることが明らかになった。捕集された全ての蚊の80%以上を雌が占めたことは重要である。これら雌の90%は移動前に吸血を行っていて、このことから病原体はおそらく移動する雌によって長距離にわたって運ばれると考えられる。ハマダラカ属の種が捕集される可能性は、捕集の高度(試料採取パネルの地表からの高さ)を高くした際や雨季の際に上昇したが、年々のばらつきや場所に関する変動は非常に小さかった。蚊の飛行軌跡のシミュレーションから、9時間の飛行での平均夜間移動距離は最大で300 kmに達する可能性が示された。一年間に、卓越風の方向と直角をなすように想定された100 kmの長さのラインをこうした高度で横切って移動する蚊の数は、ガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae)が8万1000匹(厳密にこの種だけを数えた場合)、A. coluzziiが600万匹、Anopheles squamosusが4400万匹と推定された。これらの結果は、事前に吸血した数百万のマラリア媒介蚊が数百キロメートルを超える距離を頻々と移動していること、そしてこのような距離にわたって、ほぼ確実にマラリアを蔓延させていることの説得力のある証拠となる。従って、マラリア排除の成功は、移動する媒介蚊の供給源を特定して制圧できるかどうかにかかっていると考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度