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遺伝学:ヒトの着床のトランスクリプトームとDNAメチロームの全体像の再構成
Nature 572, 7771 doi: 10.1038/s41586-019-1500-0
着床は、哺乳類の胚形成において節目となる現象である。着床の失敗は、ヒトで早期妊娠喪失の大きな原因となる。in vivoで着床直後のヒト胚を入手することは難しいため、遺伝子調節ネットワークやエピジェネティック機構が着床過程をどのように制御しているのかは、まだ解明されていない。今回我々は、着床後のヒト胚を発生させるin vitro培養系と、単一細胞のマルチオミクス配列解読技術とを組み合わせることにより、着床前後の65個のヒト胚に由来する8000個以上の細胞を体系的に解析した。トランスクリプトームデータの教師なし次元削減とクラスタリングのアルゴリズムから、胚盤葉上層、原始内胚葉、栄養外胚葉系譜の段階的な着床経過が明らかになり、着床の際に母と子の適切な連結を成立させるロバストな準備が示唆された。着床過程において、X染色体連鎖遺伝子の親の対立遺伝子特異的な発現の解析から、雌性の胚がランダムなX染色体不活性化を開始することが明らかになった。また、単一細胞のトリプルオミクス配列解析から、原始内胚葉系譜の細胞では、胚盤葉上層や栄養外胚葉系譜の細胞に比べて着床過程におけるゲノムの再メチル化がはるかに遅いことが分かった。これは、胚盤葉上層と原始内胚葉がどちらも内部細胞塊に由来する系譜であるにもかかわらず、DNAメチローム再構成の特徴に違いがあることを示している。以上の結果から、ヒト胚の着床を調節する複雑な分子機構の手掛かりが得られ、初期胚発生の解明や再生医療に向けた今後の取り組みを推し進める上で役立つだろう。

