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微生物遺伝学:腸のマイクロバイオームの構造多様性が宿主の健康と関連する
Nature 568, 7750 doi: 10.1038/s41586-019-1065-y
少数の遺伝子に差異があるだけで、それ以外は同一の細菌株であっても、表現型に決定的な違いを生じることがある。今回我々は、微生物ゲノムの構造バリアント(SV)を系統的に特定し、それらがヒトの腸のマイクロバイオームに門を超えて広く存在すること、また、異なるコホートでも再現されることを見いだした。SVは、CRISPR関連機能遺伝子や抗生物質産生機能遺伝子において豊富に見られ、ハウスキーピング遺伝子には見られなかったことから、SVは微生物の適応に役割を担っていると考えられる。SVと宿主の疾患リスク因子の間に多数の関連があることが分かり、その多くが独立したコホートでも再現された。同じSVに多く含まれる遺伝子を調べると、マイクロバイオームとその宿主の間にあると推定されるいくつかの機構的つながりが明らかになった。グラム陽性菌のAnaerostipes hadrusにおけるイノシトール異化・酪酸生合成の複合的経路をコードする領域の存在はその一例で、この領域の存在は、宿主の代謝性疾患のリスクの低下に関連している。総合的に我々の結果は、マイクロバイオームには、微生物の適応と宿主の健康に関連する多様性の新しい階層があることを明らかにしている。

