Letter

気候科学:完新世における北極の温暖化に伴う中緯度域の正味の降水量の減少

Nature 568, 7750 doi: 10.1038/s41586-019-1060-3

赤道と両極の間の気温の緯度勾配は、大気の安定性、ジェット気流の強さ、温帯低気圧に影響を及ぼす。近年の地球温暖化によって、高緯度域が優先的に温暖化し、北半球の地上の年間気温勾配が小さくなっているが、この変化が中緯度域の気候に及ぼす影響はまだよく分かっていない。本論文では、完新世の前期から中期において、より小さな気温の緯度勾配(赤道に対する北極の温暖化)が、中緯度域における正味の降水量(北緯30~50度における降水量と蒸発散量の差)の著しい減少と同時に生じていたことを示す。我々は、南緯10度から北緯90度にわたる新しく集めた完新世の古気候記録と、中期完新世の気候モデルシミュレーションのアンサンブルの両方において、気温勾配と中緯度域の湿度の推移を定量化した。観察されたパターンは、より小さな気温勾配によって中緯度域の西風や低気圧が弱くなり、陸域の正味の降水量が減少したという仮説と一致する。現在、北半球の高緯度域は全球平均の2倍近い速さで温暖化し、赤道と極の間の気温勾配は完新世の前期から中期に匹敵する値まで低下している。完新世に見られるパターンが現在の人為的に強制された温暖化にも当てはまるのであれば、より小さな気温の緯度勾配によって、中緯度域の水資源がかなり減少すると思われる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度