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腫瘍免疫学:CAR T細胞のトロゴサイトーシスと協調的な殺傷は腫瘍抗原逃避を調節する
Nature 568, 7750 doi: 10.1038/s41586-019-1054-1
キメラ抗原受容体(CAR)は、T細胞の特異性、機能、持続性を再プログラム化する人工的な抗原受容体である。患者由来のCAR T細胞は、さまざまなB細胞悪性腫瘍に対して顕著な有効性を示し、また初期の臨床試験の結果から、多発性骨髄腫において活性を示すことが示唆されている。しかし、完全奏効率が高いにもかかわらず、大部分の患者に再発が起こり、それらには抗原陰性の患者と抗原密度が低下した患者が含まれる。完全かつ恒久的な抗原消失を引き起こす機構とは異なり、抗原密度が低い腫瘍の逃避につながる機構は分かっていない。今回我々は、白血病のマウスモデルを用いて、CARがトロゴサイトーシス(標的抗原がT細胞に移動する能動的な過程)を介して可逆的な抗原消失を引き起こすことで、腫瘍細胞上の標的の密度が低下し、T細胞同士の殺傷やT細胞の疲弊が促進されることでT細胞の活性が減弱することを示す。これらの機構は、抗原密度に応じて異なるが、CD28と基盤とするCAR、4-1BBを基盤とするCARの両方に影響を及ぼす。このような動的な特徴は、協調的な殺傷や標的を組み合わせて用いることで相殺でき、免疫療法に対する腫瘍の応答を増強できる。

