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生物多様性:気候と土地利用との相互作用が熱帯山地の生物多様性と生態系機能を形作る

Nature 568, 7750 doi: 10.1038/s41586-019-1048-z

農業や自然資源開発によって世界中の熱帯山地生態系が変貌を遂げているが、こうした変化が生物多様性および生態系機能に与える影響はほとんど知られていない。非山岳地域での研究から得られる結論は、土地利用変化が熱帯山地に及ぼす影響の予測には適しておらず、それは気候環境が標高とともに急激に変化し、それによって土地利用の影響が緩和されたり増幅されたりする場合があるためである。気候と土地利用との相互作用がどのように生物多様性および生態系機能を制約し、全球的な変化の山地生態系への影響を決定付けるのかを理解することは、極めて重要である。本論文では、アフリカ最大の山であるタンザニアのキリマンジャロ山において、気候と土地利用の間の相互作用的な影響が、生物多様性および生態系機能における標高に伴う傾向を再形成することを明らかにする。土地利用強度の上昇が動植物の種の豊富さの喪失を引き起こす度合いは、湿潤な亜山地帯や山地帯よりも、乾燥した低地帯で大きかった。土地利用強度の上昇は、植物群落、動物群集、微生物群集の組成における著しい変化と関連しており、植物群落は乾燥生態系で、動物群集は湿潤生態系でそれぞれより大きく組成が変化していた。気温、降水、土地利用は共同で、土壌の特性、栄養塩類の回転、温室効果ガスの排出、植物のバイオマスおよび生産力、さらには動物の相互作用を調節する。我々のデータは、生態系機能の土地利用強度への応答が気候に強く依存しており、乾燥した低地帯および寒冷な山地帯ではより激しい生態系機能変化が生じることを示唆している。種の豊富さ、種の組成、生態系機能の変動の平均54%は気候と土地利用との相互作用によって説明されたが、単独の駆動要因と関連付けられたのはこうした変動のうちわずか30%だった。本研究は、気候が土地利用の生物多様性および生態系機能への影響を調節し得ることを明らかにするとともに、気候環境の厳しい生態系では、熱帯山岳地域で進行している土地利用変化に対する抵抗性が弱まることを示している。

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