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分子生物学:胚でのDNAの折りたたみとRNAを単一細胞レベルの分解能で可視化する
Nature 568, 7750 doi: 10.1038/s41586-019-1035-4
発生において細胞タイプを確立するには、遺伝子と遠位調節配列との正確な相互作用が必要とされる。しかし、このような相互作用が、三次元的にどのように見えるのか、複雑な組織の細胞タイプによってどのように異なるのか、転写とどのように関わるのかは、ほとんど明らかにされていない。本論文では、クロマチン構造の光学的再構築法(ORCA)について報告する。この方法では、単一細胞内において、ナノメートルスケールの精度、2キロ塩基に達するゲノム分解能で、DNAを追跡できる。我々はORCAを用いて、ショウジョウバエ(Drosophila)胚の凍結切片でHox遺伝子クラスターと、標識した約30種類のRNAを並行して調べた。その結果、活性なDNAとポリコームで抑制されたDNAの間にある細胞タイプ特異的な物理的境界に加え、ポリコーム非依存的な予想外の境界が見つかった。ポリコーム非依存的な境界を欠失させると、エンハンサーとプロモーターが異所的に接触し、遺伝子発現と発生の異常が引き起こされた。まとめると、これらの結果によって、in vivoで単一細胞におけるDNAドメインの高分解能解析を行う方法が明示され、細胞アイデンティーとともに変化するドメイン構造が明らかになり、ショウジョウバエでは境界エレメントがDNAの物理的ドメインの形成に寄与していることが分かった。

