Letter

惑星科学:予想外だった小惑星ベンヌ(小惑星番号101955)の表面

Nature 568, 7750 doi: 10.1038/s41586-019-1033-6

NASAの宇宙探査機オシリス・レックス(OSIRIS-REx)は最近、地球近傍小惑星ベンヌ(小惑星番号101955)に到達した。ベンヌは、前生物的分子や水などの揮発性物質を地球にもたらした可能性のある始原的な天体の代表で、有機物の豊富な含水炭素質コンドライトと関連付けられている低アルベドのB型小惑星である。こうした炭素質コンドライトは、親天体からの放出によって変性し、大気突入や地球の微生物によって汚染されている。従って、このミッションの主要な目的は、これらの過程の影響を受けず、汚染されていないベンヌのサンプルを地球に持ち帰ることである。探査機オシリス・レックスは、ベンヌの全球的な特性を明らかにし、サンプリング地点の選定を支援し、センチメートル未満のスケールでその地点を記録するための高機能な計測機器一式を搭載している。本論文では、オシリス・レックスの初期の観測結果について考察し、この小惑星の特性が接近前の予測と比較してどうであるかを把握して、サンプルリターンの見通しを評価する。ベンヌの全体の組成は、予想どおり水を含んでいて揮発性物質に富んでいるように思われる。しかし、接近前のモデル化ではベンヌの熱慣性とレーダーの偏波比がセンチメートルスケールの粒子によって覆われたおおむね滑らかな表面を示唆していたのとは対照的に、解像された画像からは表面が予想外に多様であることが明らかになった。アルベド、粗さ、粒径、表面の凹凸は、この探査機の設計仕様を超えている。接近前の知識に基づいて、我々は、粒径2 cm未満のもろいレゴリスからなる直径50 mの区画を目標地点とするサンプル採取戦略を開発していた。我々の観測では、見かけの上危険性のない領域は、5~20 m程度の広さのわずか数か所しかなく、その領域でサンプルを採取してミッションを成功させるのはかなり困難である。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度