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生合成:天然物の生合成での酵素が触媒する[6+4]環化付加

Nature 568, 7750 doi: 10.1038/s41586-019-1021-x

ペリ環状反応は、有機合成において炭素-炭素結合や炭素-ヘテロ原子結合を構築するための強力な変換方法である。生合成でのペリ環状反応の役割は次第に明らかになっており、ペリ環化酵素が反応を触媒する機構については大きな関心が集まっている。[4+2]環化付加(ディールス・アルダー反応)は六員環を形成させる有機合成に広く用いられており、生合成でも反応機構は十分に実証されている。[6+4]環化付加をはじめとするさらに「高次の」環化付加は1965年に予測され、高い張力のかかる十員環系が生じることから来る難しさがあるものの、現在は実験室で使われる一般的な方法となりつつある。しかし、酵素触媒による[6+4]環化付加は提案されてはいるが、実際に起こるかどうかはまだ立証されていない。今回我々は、ストレプトマイシン型の天然物の生合成における重要な段階である[6+4]ペリ環化付加を触媒する一群の酵素を明らかにした。このタイプのペリ環化酵素は、[6+4]環化付加と[4+2]環化付加を1つのambimodal遷移状態を介して触媒し、これは従来の提案と一致している。[6+4]付加の産物は、起こりやすいコープ転移を経て安定性がより低い[4+2]付加物へと変わり、この[4+2]付加物が酵素によって天然物へと変換される。3種類のペリ環化酵素の結晶構造、ポテンシャルエネルギーと分子動態の計算機シミュレーション、部位特異的変異誘発によって、この変換の機構が確立された。この研究により、ambimodal遷移状態を経る協奏的なペリ環化反応を酵素が触媒する仕組みが明らかになった。

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